可能性を信じて
ようやく『魔王』が完成した。
なまず映画の旗揚げである。昔から、旗揚げというものは縁起のよい、めでたいものだと相場が決まっている。実にめでたい。春である。
新しいことを始めることはそう簡単ではない。今回もいろいろあった。しかし、この方法でも映画が作れるということはわかった。もちろん修正点も見つかった。
作るだけでは「映画」ではない。観客に見てもらってはじめて「映画」になる。公開の前はいつも緊張するけど、今回は特に緊張している。『魔王』は特別な作品だ。
映画界の端っこで映画を作りながら生きてきて、いろんなことを考え悩んだ結果『魔王』を撮ると決めたわけで、少なくとも普通の作り方ではこれは絶対に撮れないし公開できない。ということは観客がこういう映画を見ることができない。
我々の映画は、普通の映画のように口当たりはよくないかもしれないが、野趣豊かで、苦味や辛味や臭味もたっぷりの特製なまず料理である。なまず料理は精力がつき、美肌になり、免疫力をアップさせる効果があるという。
映画を愛するあなた、芸能美食家のあなた、普通の映画を見すぎて精力減退気味のあなた、一度食べてみる価値はありますぞ。
俺は根っからの楽天家なので、この愚かな試みの可能性を信じている。蟷螂の斧が岩を砕き、湖に投げ込んだ小石の波紋はやがて岸を揺らすだろうと信じているのだ。
俺が書いたmetroの舞台『引き際』の最後に全員で合唱する歌があった。
孤立を怖れず長期戦に持ち込もう
粘り強く 嫌がらせしよう
仕方ない。諦めの悪いのは親譲りだ。
さて皆様、長らくお待たせいたしました。
いよいよ、そうですいよいよ『魔王』の上映が始まります。
普通の映画館ではない上映会場で普通の映画ではない映画を見物するまたとない機会です。
どうぞ皆様、恋人愛人家族友人先輩後輩仇敵宿敵お誘い合わせの上、ぜひぜひ会場までお出で下さいますよう、スタッフ一同沼泥から首を突き出してお待ちしております
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