天願大介のなまずブログ
「第二の選択」について
この度、いろいろ考えるところあって自主映画を再開することにした。自主映画とは自主製作・自主配給の映画のことだ。
俺は演出も脚本も独学で、師匠もいないし学校で習ったことも映画のサークルにいたこともない。助監督経験もない。独学の自主映画出身のままプロの監督・脚本家として、どこにも所属せず20年以上仕事してきた。
最初は8㎜、初めての16㎜作品『妹と油揚』が最初の劇場公開作品、それからプロになってスーパー16㎜、35㎜と撮っていき、ビデオやデジタルでも映画を作ってきた。やってきたことの総決算として6年前に『世界で一番美しい夜』という作品を撮り、それからは映画と平行して舞台を始めた。演劇である。ベニサン・ピットで初めての舞台演出をし、二人の女優さんのユニットmetroを旗揚げして、今も映画の仕事をしながら小劇場で舞台を作っている。
日本の商業映画の本流があるとすれば俺はそこにいないだろう。しかし自分では、自分こそ「映画」の本流だと勝手に思っている(三池崇史も園子温も当然そうでしょうね)。これまでは、状況がどうだろうが自分の信じる「映画」を作り続けられればいいと思ってきた。しかし、ここ数年「映画」を取り巻く環境は激変し、「映画」は変質してしまった。いや、「映画」自体が変質したのではなく「映画」の位置が変わったのだ。
かつて「映画」は娯楽芸術の頂点に君臨し、誰もが「映画」に憧れリスペクトし、「映画」だから許されることがいくらでもあった。だが今、「映画」は特別なものではない。偉そうにしてた奴が凋落すればナメられて当然だ。「映画」が特別なものではないと思う連中によって「映画」はナメられ、彼らが作った作品も映画館で上映されるから観客はそうでない作品もそれも同じ「映画」だと思うわけだ。更に言えば映画館で上映されたものをスマホの画面で見せ、これも映画だと言い張ると、観客は素直にそれを受け入れてしまう――それが現状なのだ。
俺が大好きだった「映画」はもう死んだのだと思う。
俺はノスタルジーは嫌いだ。いい作品はこれからも作られるし俺も作っていく。映画祭やベストテンや記者発表も続くだろう。でもそこで語られる「映画」はもう昔の「映画」とは違うんだよと言っているのです。いやいや「映画」はこれまでもトーキー、白黒からカラー、フィルムからデジタルと、テクノロジーの進化とともに変化発達してきたではないかと反論する人もいるかもしれない。しかし、ここ数年の変化はこれまでより遙かに破壊的で、この先どうなるのか誰にもわからない。映画で飯を食っていれば自明なことなんだけど、そのことはいずれまた書こう。
さて、そんなことを思うようになってから俺は悶々と悩んできた。
もちろん「映画」が死んでも俺の中の「映画」は生きているし、映画産業だって生きている。「映画」が変質したならそれを受け入れて勝負するのが正しい映画人的思考というもので、勝負を諦めたわけではない。これまで通りプロとして映画を作る。しかし、それでは何か足りないような気がするのである。
「映画」が死んだとして、では俺はこれから何をすればいいのだろう。さんざん考え研究した結果、また自主映画を始めようと思ったのだ。 プロとしての闘いとは別に、もう一つの道があってもいいのではないか。それがないと苦しくて仕方ない。それで「第二の選択」。もちろん、まともな奴は皆悩んでいて、それぞれの闘い方をしているだろう。だから正確に言えば、俺にとっての「第二の選択」だ。
自主映画とは自主製作の映画のことだと冒頭で説明したけど、もう一つの定義は、誰も撮ってくれと言ってないのに勝手に撮る映画のことだ。
超低予算だけど自腹で好きなものを作る。普通の映画とは違うものを作る。俳優もスタッフも、参加したいと言ってくれる、尊敬できる人たちと作る。プロのルールや慣習は必ずしも守らないで作る。
まず最初に決めたのは実は映画館で上映することで金がかかる。作るのに精一杯だからそれは無理。試写会も一切やらない。その代わりいろんな場所で上映するつもりだ。
そういうわけで、我々は「なまず映画、あるいは第二の選択」を旗揚げする。沼泥に棲息するなまずのように、しぶとく凶暴で悪食で髭の生えている感じの映画が撮れるといい。
第一回作品のタイトルは『魔王』である。
俺が脚本を書いた三池崇史監督『十三人の刺客』の中に稲垣吾郎演じる松平斉韶のこんな台詞がある。
「迷わず愚かな道を選べ。そのほうが楽しい」
斉韶は結局ひどいことになるんだけど、そもそも賢ければ最初から映画なんかやってないよ。
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