天願大介のなまずブログ
大阪、維新派、野外上映
先日『魔王』の上映で大阪へ行ってきた。大阪では二回目の上映になるが、中之島というところで維新派の「透視図」の公演があって、そこの屋台村で上映したのだ。維新派であるから、当然野外上映になる。
宣伝のため維新派のホームページに載せてもらった文章を再録しておく。
映画はどれだけ頭がおかしいかを競うチキンレースである 天願大介
青年時代、俺は多くのアングラの先輩たちの作品を目撃体験し脳を激しく掻き回された。世界は狭く無限に広い。言葉は意味だけを伝える手段ではない。音楽は肉体そのものであり肉体が自由を獲得したときそれは物質ではない何かになりうる。そして地下深く広がる水脈はすべてどこかで繋がっている……。
その後、映画や舞台で実験を繰り返してきた俺は、いよいよ機が熟したというかとうとう我慢出来なくなったというか、ともかく昨年末に自主映画『魔王』を撮ってしまったのだった。主演にはアングラ界の先輩若松武史を迎え、ヒロインには元宝塚の月船さららを配した。
『魔王』は俺の代表作だ。俺が考える「映画」の必要条件、新しい「映画」のイメージ、俺の思想や感情、知識や才能のすべてがここにある。
映画館では上映しないと決め、会議室、ライブハウス、居酒屋、寺、銭湯、ゴールデン街の酒場、立食い蕎麦屋、あらゆるところで上映を続けている。
アングラというと誤解されるが俺はノスタルジーには興味がない。形式などどうでもよろしい。水脈は今も全世界の地下を流れているのであるから、その精神は現在も有効なのだ。もちろん「なまず映画」は維新派とも繋がっているのである。
今回、維新派の野外公演の片隅で「魔王」を上映できることを誇りに思う。張りめぐらされた結界の中で、映画館では見られない「なまず映画」を是非ご堪能いただきたい。
屋台村の責任者である維新派美術スタッフのヤマシンは、雪の山形で『デンデラ』を手伝ってくれた仲間だ。あのときは維新派から四人の男たちが山形に来た。『デンデラ』では美術の稲垣さんの若頭だった小出憲が、全国から腕利きの美術大工を集めた。その後、小出憲は『魔王』『赤の女王』の美術をやってくれて、いつもその隣には佐賀の大工のタケちゃんがいた。センスはあるが酒癖の悪い小出と、大らかで物事に動じない九州男児のタケちゃんは名コンビで、『世界で一番美しい夜』で出会った仲だ。美術の水脈は現場で繋がっているのである。
維新派の美術は昔から有名で、"天才"林田裕至や磯見俊裕、花谷秀文と映画の世界で大活躍しているデザイナーを何人も輩出している。それもあって維新派の美術スタッフはいろんな映画を手伝っていて、小出憲は俺が脚本を書いた三池崇史監督の『十三人の刺客』で"天才"林田の助手だった。東京の演劇関係にはこんな集団はない。
屋台村での野外上映は面白かった。当たり前だが野外では夜にならないと上映できない。ヤマシンが板を白く塗ったスクリーンを立て、前日の雨からカラッと晴れた大阪の夕暮れを眺めながら夜を待つ。休演日なので維新派の連中は昼間から酔っている。男も女も子供たちもここでは自由に振る舞い、誰が誰だかわからない。
野外で見る『魔王』はまた別な趣があった。上映中に上空をヘリが飛ぶ。効果音のようだ。突然引っ張り出されたシネヌーヴォ代表の影山さんとのトークも噛み合わなくて楽しかった。影山さんは上映運動からスタートして大阪九條で映画館を経営している人なので、映画館で上映しないとはどういうことだと何度も聞いてきた。影山さん、映画館を否定しているわけではありませんから。
主宰の松本雄吉氏も映画を見てくれたし、遠くから来てくれたお客さんもいて、もっと面白いことができそうな気分になる。一緒に行ったプロデューサーの弟は、今度は『赤の女王』も持って大阪に行くべく、ヤマシンたちと計画を練っている。
なまず映画を始めていなければこんな経験はなかった。やはり水脈は繋がっている。維新派の人々、観客の皆さんに感謝します。
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