魔王 | なまず映画、あるいは第二の選択

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2017年5月10日

乱歩からカリガリへ

ゴールデン街劇場でのmétro「二輪草」公演が終了した。満員御礼、あの狭い劇場でぎゅうぎゅうになって見てくださった観客の皆さん、どうもありがとうございました。

ゴールデン街劇場 狭いが独特のムードがある

さて「二輪草」千秋楽の翌々日から「天願版カリガリ博士」の稽古に突入している。
以前から私は新しい物語とその形式を探っていて、この数年は江戸時代の文献や古い芸能などを研究してきた(宝の山、発見の連続だった)。
当たり前だが演劇や映画は文学の一種ではない。芸能の一つだ。文学だって音になれば芸能になる。なので脚本も戯曲も文学ではない。特に戯曲は明確に芸能的表現を目指して書かれるべきだと思う。
その研究を踏まえ、昨年の春二本の戯曲を書いた。

「二輪草」は文学が原作で、「演劇」的に整えるのではなくそのまま立体化しようという試みだ。立体化とはつまり文学を芸能化する作業である。まず最初に、昭和初期の乱歩の言葉は絶対に崩さないと決めた。

打ち上げはゴールデン街の外波山さんの店
「クラクラ」

ほぼ一人芝居の「二輪草」はそれ故伝統的な芸能の形態に近づく。しかし今日の演劇としてのリアルがなければ面白くない。乱歩の言葉そのままで、生々しくするにはどうすればいいのか。

私も役者たちも様式とリアルの間で一ヶ月苦しんだ。難しい。しかし、苦しみの中でじわじわと手応えがあった。間違いなくこの方法には可能性がある。
「二輪草」は粘って繰り返し上演したいと思っている。中身を変えなくても、これは上演の度に進化していくだろう。それが芸能化の一つの証明になる。

狭い場所で一人語りを聞くうち乱歩の妄想の世界に引き摺り込まれる「二輪草」と打ってかわって、「カリガリ」は悪意に満ちた奇怪で賑やかなファルスである。得意な分野だし内容的には「魔王」と少し重なるところもある。
映画の「カリガリ」からいくつかの要素だけ借り、そこに様々な芸能の記憶を幾重にも積み上げて、更に本格的に人形を使うことで世界の拡大を狙った。
あやつり人形を見ているだけでも面白いのに出演するのは元状況劇場の十貫寺梅軒と田村泰二郎、元早稲田小劇場の笛田宇一朗。加えて、115㎝の大型新人女優後藤仁美嬢も登場する。

そもそも梅軒さんに強引に頼まれたことがきっかけだった

郊外の稽古場では十貫寺梅軒が膨大な台詞をマシンガンのように喚き散らし、笛田宇一朗が雷のような大声を炸裂させ、田村泰二郎が仁美ちゃんに首を絞められてげぼげぼ言っている。その脇で一糸座の若い衆が不気味な人形を作っているのだった。

「二輪草」と「天願版カリガリ博士」は印象のまったく違う作品だが、同じ時期に書いたことには意味も理由もある。ひたすら考え、書き、作ることでしか前に進むことは出来ない。表現とはそういうもので、それは映画も演劇も同じだ。演劇の向こうに映画が見え、その向こうに演劇が見え、その向こうにまた……。

一糸座の人形たち
今回は動物がたくさん出ますぞ

ともかく好事家の皆さん、métroをご覧いただいた皆さん、そしてなまず映画理解者の皆さん、「カリガリ」は絶対見ておいたほうがいいですよ。アングラの先輩老人たちのでたらめぶりは感動的だし、結城一糸師のあやつりの技は本物です。
ちょっとやそっとじゃ驚かない私でも、これは相当なものだと思います、はい。

「天願版カリガリ博士」

2017年5月31日(水)~6月4日(日) 於:日暮里d-倉庫
主催 糸あやつり人形一糸座

俳優   十貫寺梅軒
     笛田宇一朗
     田村泰二郎
     後藤仁美

人形   結城一糸
     結城民子
     結城敬太
     金子展尚
     根岸まりな
     眞野トウヨウ

作・演出  天願大介
美術   濃野壮一
舞台装置 宮村成雄
音楽   めいな.CO
衣装   伊藤佐智子
照明   河合直樹
音響   幸田和真
舞台監督 大山慎一

詳しくは 糸あやつり人形一糸座ホームページを御参照ください。

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